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#0146@鉄道員を見た [映画]

普通の主婦が「扇の要」になって家族をまとめる
今日は、映画「鉄道員」を見ました。高倉健の「鉄道員(ぽっぽや)」ではなく、「元祖」の方です。1956年イタリア制作のシロクロ映画です。

主演は監督兼任のピエトロ・ジェルミという俳優です。イタリア国鉄の50歳になる運転士を演じています。

イタリア映画というと、おそらくこれまでにほんの数本しか見たことがないので、「イタリア映画らしい」というような評価はできません。それに1956年制作ですから、キャストの俳優について評価できるはずもありません。
tetstudo.jpg

ですので、普通に「感想」を述べると……。

まず、その前に映画の設定ですが、主人公のアンドレア(ピエトロ)には、妻と3人の子供がいます。アンドレアはイタリア国鉄に勤務し、第二次大戦を挟んで、30年も勤め続けています。

で、展開としては、この家族それぞれに問題が起きます。そして、それぞれが問題を抱えながらそれぞれで解決していきます。
それを、末っ子の少年・サンドロの視点で描いているところが面白く、実際の内容に比して物語を明るくすることに寄与しています。写真の左側にいるのがサンドロですが、最初の方は、この子のかわいらしさに妙に惹かれてしまいます。で、気付くと物語にのめりこんでいるという感じです。

内容として興味深いのは、「家族の問題を家族で協力して解決していこう」という姿勢が、登場人物の誰にも、まったく見られないことです。日常生活では、誰もが大なり小なり「悩み」を抱えていますが、それを解決するのに、必ずしも家族の力を必要としませんし、協力を要請することも、実際にはそう多くはありません。ところが、映画やドラマになると、そういう個人の問題を家族で協力して解決していこうというベクトルで話が進んでいきがちです。この映画では、「じつは、それはかなり不自然なことなのではないか?」と考えさせてくれます。

劇中では、アンドレアは列車を運転中に「飛び込み」に遭遇し、さらに信号無視をすることで閑職に追いやられ、なおかつ組合のストライキに参加しなかったことで職場に行きづらくなり、ひとり家を出ます。
息子はギャンブルで負けたのか、怪しい連中に脅され、娘は「できちゃった婚」をしたものの、死産で夫婦関係がおかしくなり、離婚の危機を迎えます。
そんな状況の中、末っ子のサンドロが心配しているのは「学校の成績が悪いので、お父さんに通知票を見せられない」ということ。いかにも子供らしい脳天気な悩みです。家族が崩壊しかかっているときでも、子供は常に「現実的」というところでしょうか。

しかし、ひとりだけ大変な人がいます。それはアンドレアの妻で、3人の子供の母親です。彼女は、家族すべての「悩み」を知っています。家族同士は知らないことも、彼女はすべて知っているんです。サンドロの成績についてももちろんです。

妻であり母親である、どこにでもいそうな「主婦」が、家族の「扇の要」として見えない求心力を持っていて、それが最後に家族をまとめる力になる、というのが、この映画の面白さなのかもしれません。家族で積極的に協力し合うつもりはないのに、結果的に少しずつ協力してしまうのは、きっとこのお母さんのおかげなのでしょう。

時代設定はわりとリアル(当時の)なもので、戦後復興期のイタリアを描いている感じはあります。古い建物と団地らしき新しい建築物が同時に映っていたりするのは、おそらくそういう狙いがあるのでしょう。ただ、同時代の日本映画のように、「発展」そのものを露骨に主張してはいないので、その点は好感が持てます。

それと、「ぽっぽや」との共通点というか、似通った設定がいくつかあります(おそらく故意に盛り込んでいると思われます)。それは両方を見比べて発見してほしいところです。ただ、「ぽっぽや」のように「仕事一筋」という設定ではありませんし、幽霊も出てきません(笑)。


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あかしや

日本の「鉄道員」はこれを基にしてるんですかね
by あかしや (2009-07-16 08:06) 

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