#0168@映画「シティ・オブ・メン」 [映画]
すぐそこにある「別の世界」を実感
映画「シティ・オブ・メン」を見ました。公開:2007年(ブラジル)
監督:パウロ・モレッリ
主演:ドグラス・シルバ、ダルラン・クーニャ
ブラジルのスラム街で暮らす2人の青年の友情を描いた作品です。
2人とも、自分の出自について、正確な情報を知らず、父親が誰かもわかりません。
おそらく、1990年代という設定なのでしょう。当時のブラジルは警察の汚職が横行しており、中には住民からお金をもらって、スラムの子供を殺していた警官もいたという話を、先日、何かのニュースで見ました。
そういう背景を描くためか、物語の展開上、大きな柱となっている「ギャング団同士の抗争」の場面でも、警察官が登場するのは、ほとんどラストに近い場面のみ。
つまり、警察がアテにならない、という「実情」を描きたかったのだと思われます。
ギャング、武器、私生児……。社会問題が凝縮した世界、それがスラムの現実なのだといわんばかりです。
主人公のひとり「アセロラ」はやっと18歳になったばかりですが、すでに結婚して男の子がひとりいます。友達のウォレスは、そのしばらく後に18歳を迎えます。2人はずっといっしょに育ってきた友達です。
アセロラのいとこが首領を務めるギャング団の内部抗争に巻き込まれる中、ウォレスの父親を捜します。
アセロラの父はすでに他界していましたが、それは強盗によって殺されたというものでした。
対するウォレスの父は、誰だかまったくわかりません。2人はウォレスの身分証明書を作るのに父親の保証が必要なため、彼の父親を捜します。
そして、ようやく見つけ出した父親は刑務所を出所したばかりの保護観察中。
最初は息子の出現にとまどう父親でしたが、ようやくうち解けてウォレスの18歳の誕生パーティを開いてくれることに……。
しかし、その日、2人の父親同士に「接点」があったことが判明します。しかも、それは相当皮肉な形で……。父親が刑務所に入った理由というのが……。
リオデジャネイロは海に面した街で、周囲は崖で囲まれた地形ということです。行ったことはありませんが、テレビで見た感じでも、そのような風景だったと記憶しています。その崖に住宅が密集していますが、この映画では、その住宅地の各ブロックをそれぞれ「丘」と称して、ギャング団の「縄張り」のように扱っています。その丘をギャング団が奪い合うという設定になっています。迷路のような、そして階段の多い街。そこで銃の撃ち合いが始まります。
どうやって入手したのかわかりませんが、ギャング団は大量の銃器を、それぞれ相当数所持しています。このあたり、日本ではちょっと考えられないような状況です。
ギャング団が抗争を始めても、住民はただ隠れたりおとなしくしたりしているだけで、誰も警察を呼んだりしません。
いったい、この街はどうなっているのでしょうか?
そういう背景が、日本にはないものであり、日本人には理解できないものなのかもしれません。警察がまったくアテにならない世界など、日本では想像できません。不祥事が問題になる、「わが日本警察」ですが、それでもまだまだ「まとも」なのかもしれませんね。一応、通報すれば急行してくれますから。
しかしブラジルでは……。現在はともかく、10数年前に、そういう世界が現実に存在していたのだ、ということすら、われわれが認識するのは難しいかもしれません。
すぐそこにある世界なのに。
コメント 0